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2014.12.15 『ミャンマー・フォーカス』 2015年1月号原稿
世論調査、ミャンマー国民の親日ぶりを確認


当ミャンマー経済研究・コンサルティング(MERAC)とマーケティング調査や社会調査の専門家集団であるサード・アイ(Third Eye)は、内外の政府機関や企業の対ミャンマー戦略策定のためのバロメーターを定期的に提供することをねらい、ミャンマーの「ソーシャル・ウェザー・リサーチ」(社会的天気観測)プロジェクトを開始した。その第1弾として、このほど、今年5月から6月にかけてヤンゴンおよびマンダレーで行った世論調査の結果を発表した。
長い間、日本において、ミャンマーは世界でも有数の親日国と言い伝えられてきた。たしかに、ミャンマーでそれを実感する場面は多々あるものの、親日を証明する客観的データはなかった。果たして、親日は本当なのか?それは世代や教育レベル、所得階層、地域などを超えてそうなのか?これを確認するとともに、改めて、ミャンマーの人々の中国やインドに対する意識も知りたかった。
約50年も続いた軍事政権が政権を民政にバトンタッチして、テイン・セイン政権が国民和解、民主化、経済改革を矢継ぎ早に進めた。この結果、この4年でミャンマーの政治・経済・社会は大きく変貌を遂げつつある。これまで、国民の大多数が軍政を嫌い、軍政に反対する側に身を置いてきたが、この4年間で、人々の政府(テイン・セイン政権)に対する姿勢は従来の軍政に対するものとは大きく変わったはずだ。そうだとすると、2015年の選挙は、もはや、スー・チー女史の率いる国民民主連盟(NLD)の圧勝とはならないのではないか?こうした問題意識が今回の世論調査の背景にあった。


質問は全部で52問。回答者の性別、年齢、教育レベル、毎月の所得と支出などの一般的情報に加え、諸外国やその国の製品に対する印象、外国投資に対する姿勢のほか、特別にミャンマーの人々が日本をどう見ているかについても焦点を当てた。また、テイン・セイン政権に対する評価も尋ねた。
回答者は、今年5月から6月にかけ、最大都市ヤンゴンと第2の都市マンダレーの15歳以上の男女1128人(男性44%、女性56%)。サンプリングは精度が高く偏りがない結果が得られやすい層化3段無作為抽出法で行った。具体的には、確率比例サンプリング(PPSサンプリング)で調査地区(ヤンゴン管区32群区、マンダレー管区18群区)を選択。次に群区ごとにPPSサンプリングでそれぞれ3つの集団を選ぶ。そして、サンプル集団の全世帯をリストアップし、世帯構成、所得、年齢、住所、電話番号などを世帯ごとにインタビューし、回答の承諾を得る。そこから15歳以上の回答者候補をリストアップし、システマティック・サンプリングで100人の中の10人ごとに1人をランダムで選び、名前と住所を確認するという手順だ。この手法のおかげで、ヤンゴン、マンダレーの人々の民意をより正確に反映できる回答者を選択できた。この回答者に訓練された18人のインタビュアーが1人約40分間の面接を行った。
回答結果は大変興味深いものだった。好ましい国のトップは意外にもミャンマーに厳しい制裁を科してきた米国で、日本が2位だった。ただ、日本は「ミャンマー経済に最も重要な国」で、「働きたい外国企業の国」でもトップ。「製品の質」も日本が断トツと、ほとんどの項目で日本はナンバーワンで、親日ぶりが改めて確認できた。戦時中の日本軍の行為についても尋ねたが、約9割の人が「両国の関係の障害にはなっていない」と答えた。他方、中国やインドに対するミャンマー人の印象は決して良くない(図参照)。

 テイン・セイン政権のパフォーマンス(業績)については9割強の人が評価。ヤンゴンよりもマンダレーの人々ほうが評価が高く、所得階層もどちらかというと、低い階層のほうが政府に対し好意的である。12年4月の補欠選挙で65.6%の人が国民民主連盟(NLD)を選んだときとは、だいぶ様相が異なっている。また、完全ではないものの、自分の本当の意見を表明できる環境に改善されたと、多くの人が回答している。

ちなみに、本調査は、ミャンマーで初めての本格的な世論調査で、大統領の顧問団であるNESAC(国家経済社会諮問評議会)経由でテイン・セイン大統領に調査結果のサマリーが報告された。政策立案に有用とのことで、近く発刊されるNESACの機関紙の第1号に紹介されることになっている。
巻末に詳細な集計表がついており、様々な角度から独自の分析が可能である。対ミャンマー戦略を立てる上で、多くのヒントが得られよう。本報告書の日本版の入手希望者は、下記にメールで連絡されたい。

ミャンマー経済研究・コンサルティング代表(明治学院大学名誉教授)江橋正彦 (このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。)。